それは世界のすべての場所に希望を与える、
希望の建築であった ―― 隈研吾(建築家)
1960〜70年代を席巻した「ブルータリズム建築」。ブルータル(荒々しい)という名の通り、コンクリート打ち放しの荒々しい仕上げが特徴的だが、そのデザインには「より安価な材料で、より一般の人々のため・社会のためになる建築をつくる」という現代にも有効な普遍的な原理が通底している。こうしたことから近年、世界中で再評価されているブルータリズム建築。本書は、建て替えによって失われつつある日本のブルータリズム建築について、豊富な写真と解説で紹介。その魅力に迫り、日本における再評価のきっかけを与える一冊。
<目次>
INTRODUCTION:ブルータリズム建築の再定義
散在するブルータリズム建築
01 日生町役場/HINASE TOWN HALL
02 宮津市庁舎/MIYAZU CITY HALL
03 熊本大学学生会館(東光会館) /THE STUDENT UNION OF KUMAMOTO UNIVERSITY
04 蒲郡市民体育館/GAMAGORI CITY GYMNASIUM
05 プラザ佐治/PLAZA SAJI
06 福田山全久寺/FUKUDENZAN ZENKYUJI TEMPLE
07 愛宕山少年自然の家/ATAGOYAMA HOUSE OF NATURE FOR YOUNG PEOPLE
08 奈良県浄化センター本館/NARA PURIFICATION CENTER MAIN BUILDING
09 臼杵市中央公民館/USUKI CITY CENTRAL PUBLIC HALL
COLUMN1:危機にあるブルータリズム建築
COLUMN2:生き続けるブルータリズム建築
【140点以上の写真で日本のブルータリズム建築を詳解!】
臼杵市中央公民館(大分県臼杵市/1979年竣工)
鋭角的なボリュームが噛み合う構成の巧みさと
コンクリート打ち放し本ざね仕上げの荒々しい質感に惹きつけられる、
日本のブルータリズム建築の傑作。写真は南側外観。
日本の建築界でも知る人が極めて少ない建造物だが、
1970年代以降も国内で優れたブルータリズム建築がつくられ続けていたことを示す建築。
福田山全久寺(愛知県名古屋市/1973年竣工)
寺院の上半分は銅板葺きの方形屋根で、中心に相輪が載る伝統的デザイン。
一方、下半分はコンクリート打ち放しの柱が斜め上に広がるように伸び、
その間を埋めるプレキャスト・コンクリート製の水平材が段状の壁をつくり上げる。
伝統的な仏教寺院の象徴性とブルータリズムの構造美を融合させた建築。
写真は本堂の西側外観。1973年度の中部建築賞受賞。
奈良県浄化センター本館(奈良県大和郡山市/1974年竣工)
奈良県北部65万人の暮らしを支える浄化センターの中枢施設。
写真は本館から東に延びる2階廊下で、ゲートの役割を果たしている。
建物の外観は、中央をコア状の構造が縦に貫き、
その両側に4階のボリュームがキャンチレバーで張り出す。
ブルータリズムのデザインはインフラストラクチャー的なものとも相性がよい。
≪メディア掲載情報≫
●雑誌「Casa BRUTUS 2023年6月号」(マガジンハウス)、「a wall newspaper」欄にて監修 磯達雄さんインタビュー、本書紹介(2023/05/09)
●雑誌「建築技術6月号 第881号」(株式会社建築技術)書籍コーナーで本書紹介(2023/05/17)
●「朝日新聞」にて書評掲載(2023/06/03)→好書好日
●雑誌「芸術新潮 2023年8月号」(新潮社)編集部のおすすめ!コーナーにて紹介(2023/07/25)
●書籍「SD2023」(鹿島出版会)にて書評掲載(2023/12/20)