京都からホホホ座座長(元ガケ書房店主)が紡ぐ、
見た記憶、考えた詩、書いた散文。
2004年に京都市左京区に車が飛び出た外観の「ガケ書房」を開き、2015年に「ホホホ座」へと改名・移転。その名物店主・山下賢二が本屋創業20年の節目におくる、散文ときどき詩。筆談とジェスチャーで過ごした小学生時代、夢を削るように生きていた二十代、ほっこりという盲目に違和感を溶かす今。誰もが発信者になり受け手にもなる「承認欲求の時代」に、たしかな言葉、信じられるものは一体どこにあるのだろう。近年に発表された単行本未収録のさまざまな散文(エッセイ)と詩を書き下ろしも含めて収録。人間と世の中を、過去と現在を、山下賢二ならではの視点で言葉に刻んだ。
特別冊子「山下賢二のこと」付き(紙の書籍のみ)
寄稿:松本隆、堀部篤史、廣田瑞佳、山下睦乃
本当に説得力のある言葉はやっぱりSNSにはないのではないか。それはもう書き言葉ではなく、対面で人間がとっさに吐いた生身の言葉にこそ真実があるのではないか。その人自身の生き方や基本的な考え方が「出てしまった」言葉。生身の言葉は、書き直しなしの言葉だ。言い換えればそれは、その人のデフォルトの「生活態度」と言えるかもしれない。(本文より)
目次
朝が過去形でやってくる
帰る場所がないということ/若い凧/入ってる君/行けばわかるし/これは反省文ではない/先輩たちの足どり/この詩は谷川俊太郎が書きました/横柄な横着/爆発後のルール/ほっこりという盲目/いつかのいつもの朝
むかしの一日から「1993年11月23日(水)」/見てただけ/夢を削っていく/泣いているきみを見たい/ここではないどこかはもうない/自炊行為/今日/やましたくんはしゃべらない・詳細編/かめとやました/だれでもなんでそんなん/夏が本当に好きな理由判明/そのお金/記録に残っていないけど記憶に残っている音楽イベント/記録に残っていないけど記憶に残っているダウンタウン/真面目 不真面目 生真面目
読書の元年/本屋のおやじが楽しいなんて誰が言った/ト書き/好きだから会えない人/透明な垢/思い出話は再発見のためにある/文化系男子の結び目/そこにいたのはかぞく/作家の居心地/食卓の照度/たしかに僕はあの人を見たんだ/すべての病人/見れない風景を見た人/オープンカーは全員で無視しよう/また取次が生まれる/つまる/つまらない
ガケ書房のあった場所/京都の公共交通機関オンチ/肩までつかる町/ちょっと前の京都本をふりかえってみる/だいなしの詩/わたしたちのある日の配役/忘れちまった楽しみに/年上の出来事、年下の文化/未熟者たちの時間/あなたはどうやってここまできた/あのひとは一度もこっちを見なかった/これは他人ごと、あれは自分ごと/ちいさな基点
リーダーは等身大/細胞を説得/説得力と有名が君は欲しいか/悪く言う/忘れる人間/信じるしかないもの/おおみそか
はじめてのあとがき
話したい話
【著者プロフィール】
山下賢二(やましたけんじ)
1972年、京都生まれ。2004年に「ガケ書房」を創業。2015年4月1日、「ガケ書房」を移転・改名し「ホホホ座浄土寺店」として継続。著書に『ガケ書房の頃 完全版――そしてホホホ座へ』(ちくま文庫)、『やましたくんはしゃべらない』(岩崎書店)、『喫茶店で松本隆さんから聞いたこと』(夏葉社)、共著に『ホホホ座の反省文』(ミシマ社)、編著として『わたしがカフェをはじめた日。』(小学館)などがある。
≪メディア掲載情報≫
●京都新聞 本書紹介(2024/02/17)
●Meets Regional 2024年4月号(京阪神エルマガジン社) 永江朗さんに書評欄で紹介いただきました(2024/03/01)
●朝日新聞 読書面「著者に会いたい」にて紹介(2024/03/23)→好書好日